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Second Zone (大剣編) 第十四話

昼になり、家事も勉強も少し早めに終わらせた。端末を起動して、ゲームを始める。

「そういえば、今日からバージョンが少し変わるんだっけな。」

私はパソコンの方で公式サイトを開く、ニュースと注意事項のウィンドウを開いて放置しておく。これが私のスタイル、より理解を深める為に、俗に言う「二窓」という方法を行う。ログイン画面に移ると、いつものどす黒い画面とは違い、月と扉を主張するような青色の映像に変わっていた。ログインを実行すると、サーバーの選択画面と、ニュースや注意事項、イベントなどの項目があるユーザー画面という新しい物が取り込まれていた。それでも二窓はそのままにしておき、注意事項をまず確認する

前バージョンから継続して頂いている皆様へ、バージョンの更新において、お客様のキャラクターを好きなサーバーへと移す事が可能です。その際、友達などと連絡を取る為にユーザー画面にもメールボックスを配置致しました。これからもSecond Zoneをよろしくお願いします。

メールボックスには、リュリガンを含むギルドメンバーからのメール、そしてギルド出血隊の一同からのメールがあった。AKはまだ学校に行っているのだろう。

リュリガン:よぉ!きっとお前からメールは来ないだろうと思って、俺から送らせて貰った!俺達のギルドはサーバー神無月に配置させて貰ってる、お前の言っていた通りのサーバーがあるとはな…少し驚いた、もしかしてエスパーか!?それはさて置き、マスターがお前に関心を持ったらしくてな、一度顔を会わせたいって言ってるんだが、一度ギルドに顔出してみないか?俺は今日の為に仕事を…おっと、リアルの話はあまりしない主義だった!とにかく、返事を待っている。メールが面倒なら鶏の悶のコカトリス・ゴーンシティに居るから特定会話してくれれば向かう!

リュリガン、やたらと長いメールだな…ギルドに関しては熱い男なんだろう。関心って何だ?私が神無月の事を口にしたことか?

【G】富と永遠:始めまして、まず誤解を招かないように自己紹介と、どうして君にメールが出来たのかを言おう。私の名前は載っている通り、我々のギルド、つまり十二の天部のギルドマスターだ。そしてIDアドレスを交換せずにメールが出来たのは、新しいシステムによってギルドメンバーへのメールが可能となったからだ、私の名前の隣に【G】と載っているのがその証拠だ、メンバーだからといって誰にでも送れる訳では無く、マスターランクのみが可能であるからメールの殺到は無い。リュリガンから先にメールが来ていたら詫びを申し上げる、私と一度会ってみないか?君は以外にも重要な鍵だと私には分かった、それが理由だ。ギルドホールで待っている。

こいつが、私のギルドマスターか…。後は出血隊のメールか、私のギルドの奴とは違い、手短に話してくれるのが良い所だな。パンナミグを除いて。

魔李緒:久しぶり、会えるか分かんなくてメールしちゃったけど、迷惑だったかな。睦月を選んだんだけど、斬伐はどこのサーバーにするのかなーって、出血隊の皆もバラバラになっちゃって、でもやり直しはまだ利くみたい。

パンナミグ:おっはよー!朝だよー!パンナミグだよぉ!?あのさあのさ、サーバーが皆バラッバラなんだけど!公式サイトにはプレイ時間72時間までは訂正できるんだって♪よかったぁ=3斬伐はどこにすんの?うちはどこにするかでもめちゃってさぁ↓↓魔李緒は斬伐と同じの方が良いって言っててさ、でも私は他の友達もいるしぃ…どうしよっかなぁってさ、斬伐はどこにすんの?そういえばギルド入ってたっけ?そのギルドと同じかな?初心者が集まりそうな睦月が良いと思うんだけど、どうかなぁ?また連絡してよ!じゃーにぃ☆

…さて、適当にメール送ってから神無月に行くか。でも、もう「彼女」からの示しが来てしまっている、此処でまた考えようとするのが彼女にとって重荷なら、ディスプレイを外そう。

「…もしもあの夢の事が事実だとしたら、どうする?」

いつかにお母さんとした会話を思い出す。

「どうしたのうるちゃん。」

「ん、ごめん独り言。」

「お母さんも一緒にやりたいなぁ。」

「お母さんもゲームしたいの?」

「うん、だってうるちゃん、このゲーム始めてからすごく大人に見えてきたんだもん。お母さんも気晴らしも含めてやろうかなってさ。」

-スゴク「オトナ」ニミエテキタンダモン-

私をお前達のようなはしたない部類と一緒にするな、私は子供だ、大人になるのはお前達大人が勝手に決めた事だろう。ゲームをしている時に現実を持ち込んで来るな。

…大人?私は何の為にこのゲームをしているんだろう?強くなれないリアルが嫌だからのはずが、いつしか大人になるのを嫌がっている気もする。AKはどうして小さなキャラクターをエディットしたのだろう?大人になりたくないからなのか、その方が趣味なのか。

私は強くなれる世界に居たかった、AKは女性になりたかった、リュリガンは憎まれようとも正義を貫き通せる世界を求めていた、これがこのゲームの提供する世界観。セカンドゾーン理論…もしもそれを実現する為のゲームだとしたら、この今居る世界のプレイヤーが思い描く世界、「一人一人の物語」がまたこのゲーム内の一人一人に生まれ、それに伴って生命という形で生成されているのだとしたら。

「お母さん、私…どう変わったかな?」

「え…うーん、前までは子供らしい可愛らしさがあったかな?でも今はいろいろ勉強して、色んな事を調べてるし、中学生に近付いてるというか大人に近付いてるというか。」

「強くはなってないんだね…。」

「え…。」

そうか、斬伐の言いたい事が分かったよ。私が生み出した貴方は、お母さんが生んだ私のように、産みの親の意思に沿って生きていくとは限らない。AKもそうなるかも知れない、でもAKはプレイヤーもキャラクターも、「女性をロールする」という方針を変えはしない、だからAKにはまだ気付かない。リュリガンも、他の皆も。

斬伐、今会いに行くよ。

-サーバー:神無月 鶏の悶:鉱山農村タクボー・クレハン-

「ポロロロン。」

村の入り口の方から、楽器の音が聞こえた。振り返ると其処にはいつかに会った黒い肌をしたPCが居た、猿の悶でNPCに話し掛けていた不思議な雰囲気を持つ彼が。

「セカンドゾーン、素晴らしい世界だと思わないか、お前さんよ。」

彼は独り言をいうかのように、ギターをポロロンと奏でながら答える。私と彼以外にはこの村にはPCは居ない、またNPCと話しているのかとも思えるが、初めて会ったときはNPCの顔を見て話していた。私だという確証も無い不思議な空気が漂っていた。

「…確かにすごい、けどそれ以外にも何かを感じる処がある。」

「何かを感じるか、何かを感じるのは悪い事じゃないさ、感じるってのはどの生き物にも与えられた生きる要だ。植物も光を感じ、動物も虫も何かを感じて対処や行動を起こす、それは人間という部類に分けていようと変わらない。」

「お前は…このゲームに何かを感じるのか?」

「何も感じないでゲームをしてくれるプレイヤーは居ない、たとえ店を開いて地蔵になっていようが、いつまで経っても自分の品が売れなければ一度は何か不快感を感じる。逆に売れたとしても、『儲かった』という達成感や『ぼったくったぜ』とかいう罪的快感を成立させる。」

「そうだな。」

「でも気を付けろ、ゲームは自分を映す鏡という訳でも無いし、もしそうだとしても破片となって傷付けてくるかも知れないからな。」

「え…。」

…彼は居なかった、始めから存在していないとでもいうかのような、亡霊とでも言うかのような雰囲気。彼は何者なんだろう、黒いPC…ひょっとして。

-鶏の悶:コカトリス・ゴーンシティ-

「…来てくれたか!」

「AKがまだログインしてない、さっさと終わらせたい。」

「ああ、じゃあこれを渡しておくよ!」

リュリガンと出会い、早々と話を進めると、少し大きめの鍵を私に渡してきた。その鍵は細かな装飾がされていて、金色に輝いていた。どうやらギルドの紋章のようなものがあるので、これはギルドに関するアイテムであるだろう。

「これはギルドキー、新しく導入されたシステムでついにギルド作成は仕様化になった。これからはギルドは正式なシステムの一つ、これからは胸を張っていけるぜ!…じゃなかったな、つまりこのギルドキーがあれば自分の所属する『ギルドの悶』をどこでも開く事が可能って訳だ。」

「そう、じゃ。」

「ちょ…そんなに急いで行かなくても。」

「そういう奴なのさ、その人は。」

「カシュガン、だらしない所見せちまったなぁ。ん、そいつは…。」

-ギルド:十二の天部-

転送された先はまるで高級ホテルのロビーのような広間だった、勿論フロントも配置されていて、まさにホテルだ。

「十二の天部へようこそ~、あ…メンバーの方でしたか。」

フロントに居たPCが話し掛ける、どうやらNPCでは無いようだ。インテリジェンスな風貌を漂わせるが、可愛らしい女性キャラクター、名前はたゆり。

「ギルドマスターに呼…」

「私が呼んだ。」

背後から低くも響くような声を聞かされ、少し女性らしい悲鳴を漏らし振り向く。「おや、以外にもそんな一面があるんだな。」とその巨漢は言うのだ、全身をローブで多い、姿を見せないが、その達磨のような印象を持たせる風格は忘れ様が無かった。彼がベータ版、テストプレイヤーの一人であり此処のギルド、十二の天部のギルドマスター…

「富と永遠、皆はマスター、又は富と呼ぶ、ようこそ我がギルドの悶へ。」

「…お前は一体。」

「『合成人』を見るのは初めてだろう。」

そういうと、彼は正体を露にしたのだ…しかし人間らしい所がどこにも無い、ライオンの顔をして、腕はやや毛深い人間という事にしても良さそうだが、脚は4本あり、鱗のある大きな男を持つ、複数の生物を掛け合わせた幻のキャラクターともいわれ、今ではエディットが不可能、つまりテストプレイヤーにのみ与えられたキャラクターという事だ。彼はローブをまた着る作業を続けながら話を続けた。

「私の部屋で話をしよう、たゆり、彼女にルームを与えてくれ、それといつも通りの品を揃えて置くよう手筈を進めてくれ。」

「分かりました、報告書を後ほど提出します。」

「頼む、では行こうか。」

私はロビーから階段を上って行き、最上階にあるマスタークラスのフロアまで行くのに数分掛かる程だった。それまでに大きいギルドだと言う事は理解出来たが、そもそも此処は何処なんだろう。

「此処が私のルーム、マスタールームと呼ぶ。君のルームもこれから作られる予定だ、勿論AK-03のルームも用意しよう。」

「AKは私と同じ部屋を希望するだろうから必要は無い、それよりも此処は何処なんだ?ギルドの悶とリュリガンからは聞いたのだが、猿の悶や鶏の悶と同じような分類なのか?」

「ギルドの悶、たしかに悶とは付いているが、バージョンが変わってからギルド設立が公式として採用された為に、それなりの作業が必要となる。ギルドを作る、つまりマスターとなる人物と、それに続いてきてくれる他のプレイヤーが居る事が一つ。そしてそれをパーティーという形では無く、『一つの組織』としての集団でなければならない事が一つ。そしてギルドの悶のように組織運営の為に施設を設立する時は、ギルドマスターがエリアマスターでなければならない事が一つだ。」

「…つまり、此処は何処かの悶にあるエリアの内部に存在するって事だな?」

「左様、此処は[猿の悶:十二神の記述、断片]というエリアに位置する。詳しいエリアグラフを発行させるか?」

「いや、必要無い。」

「そうか、AK-03と同一の部屋を使うのであれば、広いルームを用意させよう。少し待っていてはくれないか、たゆりに再度申請をしなければいけないのでね。」

「手短に頼むよ、いろいろとね。」

「心掛けよう。」

そう言って、静かにマスタールームの扉を閉める。私はその部屋に残された、そして実感するのだ、ギルドという組織の一員である事を。窓から見下ろすと、とても豪華な塔である事が理解出来る。そして良く目を凝らすと、下では建築物を運ぶ人々が見える、つまり此処は自らの手で設立しているのだと思う、しかしこんな短期間で出来るとも思えない。おそらくエリアマスターになった事で、エリア内の建造物をも手中に収める事が出来るのだと思う。つまり最初からこのエリアにあった塔を拠点としていたが、ギルドの仕様によって、施設の拡大を計っているのだろう。

「おっと…また考えすぎたな、悪かった斬伐…今は私としておくか。」

そうしている内に、再び扉は開かれるのだった。

第十四話 ギルドの悶

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